発端

ここのところ KOFFEE MAMEYA にどハマリしている。Raspberry Candy / ONA Coffee の異次元のうまさに感動して、同僚からもらった Ethiopia Zelelu Ararso / MAME も意気揚々と淹れたところ、全然美味しく作れない。

いろいろ考えて試行錯誤していたら 150g の豆は数日間で溶けて、結局満足できる1杯は得られなかった。

この記事では最初の状況、自分の試行錯誤、淹れ方の相談、別の豆でリベンジ、優勝までを長々と書く。

解決方法を3行で

  • お湯を数回に分けてそそぐとき、すべて回し入れると、粉が撹拌されすぎて過抽出になる
  • 例えば5回のうち最初の2回だけ回し入れて、以降は中心部分に静かにそそいで調整する
  • 豆によっては撹拌しまくっても過抽出になりにくいものもある

初回

Ethiopia Zelelu Ararso / MAME のレシピに従って淹れてみた。

粉: 15g
お湯: 225g
抽出時間: 2分20秒
湯温: 90度
挽き目: WilfaでFilterから右に3目盛り

結果、あまり好みではない味になってしまった。

  • エグみが強く出ている
  • 酸味がわからないくらいボディが強い

テイスティングノートは ApricotSweet orangeEarl gray なので、これは明らかに自分の淹れ方が間違ってる。特に Earl gray が入っていれば、フローラルな紅茶のようなさっぱりとした味わいがあるはず。

思い当たる原因や気になる部分として以下がある。

  • 抽出時間の目安を大幅にオーバー(だいたい 3 分 30 秒、ひどいときは 4 分以上)
  • 明らかな過抽出
  • ドリップ後のドリッパー内が泥のようにベッタリしている

この段階ではあと1回か2回淹れればうまくいくだろうくらいに考えていた。

試行錯誤

強いエグみが出ているので過抽出であることは明らか。また目安時間を大幅にオーバーしているので粉がお湯に浸っている時間が長く、透過式ではなく浸漬式になってしまっているのも要因。その対策として試したことをすべて書いてみる。結果的にうまくいかなかったけど。

粉を粗くする

最初に思いつくのは粉の粒度。粗くなればお湯が詰まらずスムーズに流れる。また、豆は砕けば砕くほど、内部にある組織が表面に出るので成分が抽出されやすくなる。なので思い切って Wilfa の Filter の目盛りに合わせた。もともと Filter から右に3目盛りなので一気に粗くなる。

結果、あまり大きな改善にはつながらなかった。抽出時間についても 4 分を超えることもあってここも変わらない。味も差がわからない程度。

仕方ないので、次は Filter から左に2目盛りにしてみた。抽出時間は改善したものの、さすがに粗すぎて抽出がアンバランスになってしまった。単純に薄いコーヒーができた。

湯温を下げる

挽き目は Filter から右に2目盛りに固定して、次に調整したのは湯温。温度が高いほど抽出が促されるので、レシピでは 90 度となっているところを 86 度にしてみた。glitch とかだとこの温度が標準ではあるけど、KOFFEE MAMEYA は 90 度の指定が多いように思う。

結果、こちらも差がわからなかった。挽き目を戻したことで抽出時間は元に戻ってしまったし、冬ということもあって、抽出後半は 84 度くらいまで落ちてそうだし、それでも変わらないということは別に要因がありそう。

前半の湯量を増やす

豆の残りも少なくなってきて、半ばヤケになりはじめている。

何度もドリップして感じたことは、ドリッパーの穴に豆が詰まってしまう。粉がいつもと違ってドロドロになりがちで、それが要因で詰まっているように見える。要因が抽出時間の長さなのかわからないが、こうなると鶏が先か卵が先か、という問題になりつつあるので、分けて入れるお湯の量を変えてみることにした。

具体的にはドロドロになる前に多めにお湯をそそいでしまう作戦。例えば蒸らしたあと、一気に 100g 以上投入してしまう。

結果、抽出時間は多少改善して、味についても飲める程度にはなった。けど、美味しいとは言えない出来で、豆もなくなってしまって心が折れた。

ふりかえり

150g もの豆を溶かしたあと、思い浮かぶことが2つある。

  • 自分のドリップ技術が足りない
  • そもそもこの豆は自分の好みではない

1 つ目については明らかに正しいんだけど、2 つ目については正解を飲んでみないとわからない。それによく考えてみるとドリップの技術はここ最近向上していない。うまく淹れられない豆に当たったのはチャンスなので KOFFEE MAMEYA に行って正解を飲みつつ、相談することにした。

KOFFEE MAMEYA に相談だ。

お店の人には現状をそのまま伝えたところ、

  • Zelelu Ararso のドリップ方法を細かく解説
  • Zelelu Ararso を実際に飲んでみる

という方針で取り組むことになった。この時点で、お湯のそそぎ方なんじゃないか、と当たりをつけている感じだった。すごい。

ドリップを始める前からいろいろ解説してくれる。Hario の V60 を使う理由はやはりこの豆はお湯が溜まりやすく、できるだけ透過式に寄った抽出にするためであること、一方で Raspberry Candy はすんなりと落ちすぎるのでカリタを使って抽出されやすくしていることなど。

お湯のそそぎ方について、1投目は蒸らしで粉の量の倍くらいを粉全体にかかるように入れる。2投目は粉を撹拌するつもりで円を描くように入れる。3投目以降はあまり粉が動かないように中心部分にだけ当たるように細く静かに入れる。 このそそぎ方が決定的な違いだった。自分はこれまで考えなしにすべての回においてまわし入れていた。その結果、常に粉が撹拌されてしまい、豆の内容物が出てしまってドロドロになり、目詰まりを発生させた。

淹れてもらった Zelelu Ararso を飲んでみると、紅茶のようにさっぱりとしたクリーンカップなのに、アプリコットの甘み、オレンジの甘酸っぱい酸味が共存していてかなり好みの味だった。

前回買ってあまりにも美味しすぎた Raspberry Candy は当然リピートするとして、さすがに Zelelu Ararso をもう1度買ってリベンジするか迷っていたら、同じ淹れ方の豆が他に2つあるということで、練習も兼ねてそっちを買っていくのはどうだろう?という提案をしてもらった。それで買ってみたのが Colombia Edith Enciso and Wilson Rodriguez / The Coffee Collective

リベンジ、そして優勝

Enciso の淹れ方は Zelelu Ararso と同じ。レシピには粉 16g も書いてあるが、それは完全に好みでもう少しボディが欲しいと思ったら試してみて、とのことだった。まずは 15g で淹れてみる。

粉: 15g
お湯: 225g
抽出時間: 2分20秒
湯温: 90度
挽き目: WilfaでFilterから右に2目盛り

前回のドリップ方法から変えた点は以下。

  • 投入2回目まで撹拌、3回目以降はお湯で撹拌しない
  • 蒸らしの湯量は粉の2倍(これまで 50g くらいだった)

実際に淹れてみたところ初回からかなり美味しく淹れることができた。これは本当に嬉しかった。

今回のテクニックを使えば、何回目までまわし入れるかによってボディの強さを調整することができる。これまで美味しいと思っていた Raspberry Candy も、改めて飲んでみるとエグみが出ているような気がしたので、3回目までまわし入れるようにしてみたら劇的に改善して、お店で飲んだジューシーな、本当に名前のとおりの「Raspberry Candy」の味わいにかなり近づいた。